2011年8月24日水曜日

MacBook Air、VAIO Z、Ultrabook構想が示すノートブックの未来、Dynabookへの道

 2008年1月、最初のMacBook Airが発表された。この頃のMacBook Airは、最低22万9800円、上位モデルは38万8400円という、大変高価な代物だった。
 そして、2008年10月、GeForce 9400Mを搭載したモデルが発表された。これも、下位モデルが21万3800円、上位モデルは29万8800円というハイエンドモデルだった。しかし、このモデルは非常に大きい意義を持つ。Core 2 DuoとGeForce 9400Mを搭載するこのモデルは、性能のバランスが非常に優れているのである。当時のノートPCはは、大型のノートPCはディスクリートGPUを搭載するものの、モバイルノートに於いてはことグラフィックス機能は非常に軽視される傾向にあったと言える。
同じくGeForce 9400Mを搭載したモデルとして、DELLのStudio XPS 13が挙げられるが、これはMacBook Airと比較して1kg近く重いもので、モバイルPCと呼ぶの憚られる。
 MacBook Airと同様の、必要十分な性能を備えたモバイルPCと呼べるものは、2008年8賀つに発売されたソニーのVAIO type Zのみだったと言えるだろう。その後、VAIO type Zは後継モデルのVAIO Zへと連なり、他のモバイルPCには無い高解像度液晶等の独自のアドバンテージによって、市場でハイエンドモデルとしての地位を保っている。

 このような、必要十分な性能(有体に言えば、それまでのモバイルPCのグラフィックス機能を強化した性能)を持つモデルは、長らく高価なハイエンドモデルとして市場に君臨し続けていた。そこに変革をもたらしたのが、ポストネットブックとして登場したAcerのAspire Timelineシリーズである。
 2009年6月に発売されたAspire Timelineシリーズは、1.6キロと多少重いが、Core 2 Duoを搭載し、8時間のバッテリーライフを実現しながら8万9800円という破格のコストパフォーマンスを実現した。下位モデルではGPUはチップセット内蔵で、上位モデルに用意されるディスクリートGPUを搭載した場合は重量はさらにかさみ、モバイルPCと呼ぶには厳しい重量になってしまう点は少々残念だったが、このコストパフォーマンスの良さはそれをもって余りあるものであり、市場の価格破壊を行い、全体の値段に波及したことは間違いないと言えるだろう。

 Aspire Timelineシリーズの影響を受けて、各社が有象無象の安価なモバイルPCを乱造する中に、流星のごとく登場したのが第4世代MacBook Airである。第3世代の次点で15万~20万円と、それ以前と比べて大分値下げはされたが、それでもそれなりに高価であることには違いなかったが、2010年10月に発売されたこのモデルでは8万8800円~と大幅に値下げが行われた。このモデルではグラフィックスにGeForce 320Mが採用されていて、必要十分な性能と抜群のコストパフォーマンスを誇るモデルとなった。

 そして、この市場に次なる変化をもたらしたのが、Intelの第2世代Core iプロセッサ"Sandy Bridge"である。第2世代Core iプロセッサのリリースにあたって、将来を見据えた上でチップセット内蔵グラフィックスの性能を大きく底上げした。Sandy BridgeではCPUとGPUがオンダイレベルで統合され、転送速度が大幅に上がっただけでなく、その他にも様々な改良が加えられ、Intelの新世代プロセッサに相応しいクオリティのプロセッサが誕生したと言える。後々のCPUの歴史上でも重要なプロセッサの一つに数えられることは間違いないだろう。
 これにより、同CPUを採用するほぼ全てのコンピュータが、これまでに何度も本記事で述べた"必要十分な性能"を備えることになる。また、Sandy BridgeではCPUとGPUが統合されるので、それまでのディスクリートGPUを採用することで必要十分な性能を実現してきたコンピュータと比較して、実装面積を縮小し、さらに消費電力を抑えることまでも可能となる。
 ミドルレンジ以下のディスクリートGPUは、GPUを内蔵しない一部のプロセッサを除いて不要のものとなり、ゲーマー等のための本当にハイスペックなGPUを必要とする人々のために提供されることになる。これは、Intelの持つ市場訴求力を利用した、コンピュータを使う全ての人のコンピュータのGPU性能の底上げであると言えるだろう。
 2011年7月にリリースされた最新の第5世代MacBook Airでは、いち早くこの第2世代Core iプロセッサが採用され、持ち前の性能のバランスの良さと抜群のコストパフォーマンスを遺憾なく発揮している。

 そして、それまでの市場の動向を見極めた上で、Intelが発表したのが"Ultrabook"である。Ultrabookは、Intelによれば、現行の主流のノートPC(すなわち第2世代Core iプロセッサであるSandy Bridgeを採用するノートPC)と同等以上の性能を備えながら、薄く軽く、低価格で販売されるノートPCを指す。具体的には、Intelの次世代プロセッサである"Ivy Bridge"を採用するノートPCや、その後継プロセッサを採用するノートPCを指すのだろう。
 そして、この構想は、アラン・ケイ氏が提唱したDynabookへ至る道の一つであるとも言える。ソフトウェアレベルで、Dynabookへと繋がる道筋はまだまだ不明瞭なままだが、性能的な部分ではDynabookはUltrabookの延長線上にあるものであると言えるだろう。
 Ultrabookに属するPCが将来発表されていくであろう中で、μSSDを採用したモデルが増加し、将来的なノートPCでの主流のストレージはSSDになっていくことが予想される。今よりもさらに、モバイルブロードバンド環境を内蔵する環境は増え、クラウド化も進むだろう。そうなれば、必要なストレージの容量の増加スピードは鈍化するだろう。ユーザの要求として、薄型軽量化、バッテリライフの改善、エンタテイメント向けの高性能化が要求される中で、今まで足かせとなってきた2.5インチHDDが減っていくだろう、と私は予想している。HDDは、そのハードウェア特性上、縮小すれば速度が低下するからだ。一方で、SSDは半導体メモリであるから、そのような物理的特性にとらわれない。モバイルPCと非常に親和性の高いハードウェア特性を持つのである。

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